4

 色んなことを分かろうとして、色々無茶をしてみるのだけれど、全てが上手くいくわけではなくて。時には誰かを傷つけたりして。ひょっとして、というか、かなりの部分で、僕はサイコ野郎なのかもしれないと思う。自分の知りたいの為に、誰かを傷つけてるわけだし。

 でも分かりたいものは分かりたいから、このままバカみたいにやってくと思う。嫌だなぁ。しょうもないなぁ。

3

 ギターを買った。アンプとか付いて3万8千円。急に弾きたくなった。何か、楽器一つ出来たら素敵だし。

 パワーコードっていうのが簡単で楽しいらしい。やってみる。弦を押さえる。うわあ、指がいてぇなぁ。

 めげずにジャカジャカ弾く。弦の押さえ方がわかってくる。少しずつ音が綺麗になってく。楽しい。

 ジャカジャカ。ジャカジャカ。

 楽しい。

 1時間ぐらいずっと弾いてたら、肩が痛い。

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2

 ああ、サンマは美味しいなァ。

 難しいことは何にもない。2尾500円のそれに塩をジャリジャリと擦り込んで、半分に切り、そのまま油を少しだけ引いたフライパンで焼く。すぐに焼けてしまうから、焦がしてしまわないように、まだかな、まだかなとせわしなく覗く。身が肌色になってきたら火を止める。

 ご飯にのっけて食べると、先程これでもかと擦り込んだ塩が効いて進む進む。すぐにご飯が無くなってしまう。美味しすぎるのも考えものかもしれない。

 同居人は特に好きでも嫌いでもないといった風で、黙々と食べていた。骨が気に入らなかったのかもしれぬ。しかし、同居人は、あれこれの感動を顔に出すタイプではないから、本当は感動していたかもしれぬ。よくわからない。よしんば顔に出るタイプであったとて、他者の考えていることなど推し量ろうとした所でどだい無理な話だ。僕に気を使って「うまい。うまい」と口にしながらその実「こんなもの食わせやがって」と思っているかもしれぬ。基本的に他者は分からない。だがそれをどうこうしようとも思わない。

 ああ、サンマは美味しいなァ。

1

 同居人が仕事が見つからないと嘆いている。正確には、そいつが続けていけそうな仕事が見つからない。そいつは朝に弱く、体力も無く、躁鬱で、とにかくこの世界で生きていくには弱りすぎていた。そうして、何度もバイトが決まっては数日で辞めるということを繰り返しているうちに、バイトに応募する行為そのものに強い恐怖を抱いているようだった。それを知った上で一緒に住んでいる僕であるから、「僕のバイト代もあるし、僕の両親からの仕送りもあるから、数年は問題ない」と答えると、「それでも、いつ君に出て行けと言われるか分からないから、働いていないと怖い。部屋で何もせずにしていると気分が重くなってだめだ。かといって遊ぶのも罪悪感を煽ってしまってままならない」と言う。「仕事を探す勇気は出ない、しかし働かず遊ぶのも苦しい。難儀なものであるね」僕にはそれ以上の事は何も言えない。僕も実家で2年程ニートをして、毎日毎日2chだのニコニコ動画だのに身をやつしていた者であるから、結局のところ時間の経過による変化に希望を求めるしかないことは知っている。幸い、僕たちに用意された猶予は結構長いようだし、焦ることはないと思われる。

 それでも、すっかりそのことで同居人は弱ってしまっている。親の虐待から逃れて、半年前に僕のところへやってきた時から、ずっと似たような調子である。

 せめて、気兼ねなく遊び呆けるなり、思索にふけるなり、してくれればよいのだが。猶予あるうちにそういうことをしておくのは、決して無意味ではないと、僕は思うのであるが。そういったことを口にしたところで、「でも、やはり私は苦しい」と言葉が帰ってくる。結局はそいつ自身が自ずからどうにかするしか方法などないのであって、僕に出来ることなど、ただ生活費を仕送りと自分のバイト代で捻出しつつ、機を待つことのみである。