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 ああ、サンマは美味しいなァ。

 難しいことは何にもない。2尾500円のそれに塩をジャリジャリと擦り込んで、半分に切り、そのまま油を少しだけ引いたフライパンで焼く。すぐに焼けてしまうから、焦がしてしまわないように、まだかな、まだかなとせわしなく覗く。身が肌色になってきたら火を止める。

 ご飯にのっけて食べると、先程これでもかと擦り込んだ塩が効いて進む進む。すぐにご飯が無くなってしまう。美味しすぎるのも考えものかもしれない。

 同居人は特に好きでも嫌いでもないといった風で、黙々と食べていた。骨が気に入らなかったのかもしれぬ。しかし、同居人は、あれこれの感動を顔に出すタイプではないから、本当は感動していたかもしれぬ。よくわからない。よしんば顔に出るタイプであったとて、他者の考えていることなど推し量ろうとした所でどだい無理な話だ。僕に気を使って「うまい。うまい」と口にしながらその実「こんなもの食わせやがって」と思っているかもしれぬ。基本的に他者は分からない。だがそれをどうこうしようとも思わない。

 ああ、サンマは美味しいなァ。